21年前の『稼げる実務翻訳ガイド』

2016年02月23日

部屋の整理をしていたら、1995年6月発行のアルクのムック『稼げる実務翻訳ガイド』が、物入れの奥から出てきました。会社勤めのプログラマだった私が、翻訳の勉強を始めて間もない時期に買ったムックです。

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1995年6月というと、Windowsがまだ 3.1 で、インターネットもほとんど普及していなかった頃。ムックの中身をパラパラ見てみると、仕事の環境に関しては、隔世の感を覚えます。

たとえば、翻訳会社からの連絡の受け方について、「携帯電話にせよポケベルにせよ地下鉄や地下街などでは役に立たないので、確実にメッセージをキャッチするには2時間ごとに自宅の留守電を外から確認するのもひとつの方法」との説明があります。また、翻訳原稿の納品方法については、「翻訳会社あてにパソコン通信でデータを送るか宅配便でフロッピーを送ることになる」とのことです。ちなみに、当時NIFTY-Serveの翻訳フォーラムは「会員1万7000人(95年3月現在)」だったそうです。
(以上の引用部分はいずれも、河野弘毅さんご執筆の記事「『翻訳道具』活用法」より抜粋)。

しかしそんな中、「実務翻訳業界の仕組み」という無記名の記事で、次のような一節に目が止まり、ちょっと驚いてしまいました。

「最近では機械翻訳があちこちで取り上げられるようになり、翻訳者は翻訳機械に仕事を奪われてしまうのではないかと懸念する向きもあるようだ。しかし、機械による翻訳では、まだとうてい、滑らかで読みやすい日本語を仕上げる段階にまでは至らず、むしろ、良質の翻訳作品を仕上げる翻訳者への需要は以前にも増して高まっている。言い換えれば、実務翻訳者は機械にはおよそまねのできない質の高い翻訳作品を生み出すことによって新たな活路を見いだすことができるとも言えるだろう」

今から21年前、フロッピーを宅配便で送っていた時代の文章なのに、アルクの最新の『翻訳事典』(2017年度版)にそっくりそのまま出てきたとしても、ほとんど違和感がなさそうな一節です。機械翻訳が人間の仕事を奪うという話は、古くて新しい話題だったんですね。知らなかった。

ただ、上の一節は、実務翻訳なのに「作品」と言っているあたりがちょっと気になりますが。

ちなみに、物入れから出てきた『稼げる実務翻訳ガイド』は、このほかに 1998年度〜2007年度版が揃っていました。少しずつひもときながら、時代の流れを確かめてみようと思います。
(現在ネット上で見かける著名な方々の昔の写真を眺めるのも一興であります)。

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posted by 内山卓則 at 21:21 | 雑記・日記